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自分とのつきあい方―自己肯定感について考える―

自己嫌悪で辛かったり、自分に自信が持てなくて悩んでいる方へ。

回り道をしたっていいじゃない【ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』書評】

長らくご無沙汰していました。放置していたので全然見られていないだろうなあと思っていたのですが、久々に開いたらたくさんの方が見てくださっていて、びっくりしました。うれしかったです。いつもありがとうございます。これからはもう少し高い頻度で更新していけたらと思っています。

 

今日は、ヘッセの『シッダールタ』という小説を紹介します。

ヘッセは『車輪の下』が有名ですが、それ以外にも素晴らしい小説をたくさん書いています。その中でも『シッダールタ』は、自分の生き方を考えたときに読んで心の支えになってくれた一番好きな本です。

「シッダールタ」は仏教を始めた人、仏陀の本名ですが、この話は特に仏陀や仏教の歴史的な事実とは関係ありません。悟りを求める人の一生を描いた物語です。

 

ここからはネタバレも入るので、ご注意くださいね。

この話の裏に流れている哲学というのか、人生に対する態度が私はとても好きです。シッダールタは悟りを求めて紆余曲折するのですが、壮年を過ぎて自分のこれまでの堕落した生き方を非常に後悔し死んでしまおうとする場面があります。しかし、この無駄に思われる回り道なしには自分は世俗の生活を知ることはできなかったし、それは自分の道ではないということに気づくこともできなかったと思い直して生きていきます。「だが、それはそれで正しかった。」と自分の回り道を肯定する態度に深く打たれて、私も自分のこれまでを考えました。

自分になんて価値がないと思って生きていた5年間、もしもっと自己肯定感が高ければもっとたくさんのことができて、もっと幸せな人生を歩んでいたのではないかと思っていました。留学も本当はしたかったけれど自信がなくて踏み出せなかったし、就職活動も違ったものになっていたはずだと考えると、なんて無駄というかむしろマイナスの5年間を過ごしたんだろうと感じていました。

でも、『シッダールタ』を読んでからは少し考え方が変わりました。もしこの5年間がなくて、大きな挫折を経験しなかったら自分はどれだけ人の気持ちや社会のあり方に鈍感な人間だったんだろう。逆に、大人になって考える時間がないときに自己嫌悪に陥っていたらもっと悲惨な状況だったんじゃなかろうか。そういう風に捉えるようになりました。

回り道をしたけれどもそれはそれでよかったんだ、と今は心から思っています。しんどい思いをしたからこそ得るものもある。

 

筆の力が足りなくてヘッセの良さを伝えきれていないのがもどかしいですが、本当に彼は孤独や生き方について考え抜いた作家だということが、小説を読んでいると伝わります。

よければぜひ読んでみてください。自分は孤独だ、という気持ちを持つ方には『荒野のおおかみ』もおすすめです。