スーザン・ケイン『内向型人間の時代』【書評】
こんにちは。三寒四温とはこのことか、と実感する日々が続きます。
今日は、スーザン・ケイン『内向型人間の時代』という本を紹介します。彼女は同様の内容を短くまとめた講演をTEDでも行っているので、こちらもぜひ見てみてください。
スーザン・ケイン 「内向的な人が秘めている力」 | Talk Video | TED.com
彼女の主張は、ひとことで言えば「内向型には外向型と異なった良さがある。外向型ばかりをもてはやす傾向や、内向型を外向型に変えるような育て方は考え直さなければならない。」というものです。
現代では外向型であることは良い・内向型であることは悪いとされ、友達が少ない子どもは「異常なのではないか」と心配されたり、オフィスでは絶えずチームで話し合いながら考えることを強いられたりします。でも、著者によればアメリカ人の1/3~1/2は内向型なのだそうです。そして、赤ちゃんの頃にかなりの正確さでどちらかを見極めることができ、内向型・外向型というのは生まれ持った性質という部分が大きいようです。
そして、内向型は人が大勢いる場に出向いたりスピーチをしたりするのが苦手ですが、よく観察し、深く考え、またコツコツ物事に取り組むという長所も持っています。リーマンショックを予期した内向型の人は少なくなかったのに、外向型の人々はそれに耳を傾けなかった、ということをケインは述べています。また、外向型がたわいのない話を楽しむのが得意なのに対し、内向型は少数の人と本質的な会話をする傾向があります。書店で「雑談力」の本を見かけましたがこれなんてまさに「外向型になれ!」と言っているようなものですね。内向型の人はひとりで物事に取り組める環境で力を発揮することが多いのですが、そういった環境は学校でも職場でもなかなかないのが現状のようです。
一方、外向型のようにふるまうことが必要な場面も世の中にはありますが、そういう時にどうしたらいいかは徐々に学び、練習をしていけばいいのです。
私は20個のチェックリスト全てに当てはまった典型的な内向型ですが、この本を読んですごく安心しました。この性格は、もともとの刺激に対するストレスの程度が大きい身体的な仕組みになっているというところから来ている部分が大きく、別に自分が駄目なせいや努力をしてこなかったせいではない。当たり前ですがそれを再認識しました。スピーチや人付き合いの「技術」が習得可能だと思えたのも大きな変化でした。「自分はコミュニケーション能力がない」「人との付き合い方に問題がある」と思っている人には、ぜひ読んでほしいです。
この本から学べることは、内向型・外向型についての話だけではないと思います。様々な種類の人が世の中には存在し、どんな人にもそれぞれ良さがあること。一方社会が特定の人間ばかりを評価しがちであるために、自分の良さを殺して評価されるような人間のように無理して振る舞い疲れてしまう人や、自分はそういった人間ではないから駄目なやつなんだ、と自己嫌悪や劣等感に陥ってしまう人がいること。これは現代日本において非常に大きな問題だと思います。
日本の例を挙げると、ひとつの物事に継続して取り組むことが美徳であり、飽きっぽいことはよくないことだとされますよね。一方、たくさんのことに挑戦する人や、多くのことを同時に器用にこなすことができる人が「自分は努力ができない(から駄目なんだ)」と言うのを何度も耳にしました。
自分や他人の特性を認め、短所を直すのではなく長所を生かすためにはどうすればいいのかを考えること。その中で、短所そのものを改善するのではなくどうすればそれをカバーできるか考え、できる範囲で取り組む・取り組ませること。これができれば、「社会不適合者」なんて世の中にはいないんじゃないでしょうか。社会不適合を作りだしているのは、私たちの考え方なのだと思います。
あなたは社会不適合なんかではないし、素敵な長所をたくさん持っている。世の中の価値観というくだらない色眼鏡を通して自分を見ているせいで、それに気が付いていないだけ。
何度もこのブログで言っていることですが、これからも言い続けます。
今日も空は広い。
夕(ゆう)
MAIL: r921k4u@gmail.com